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蝋燭について

昔は暗闇を照らし部屋を明るくするために、また舞台の役者を照らすなどの照明器具としても使

用されましたが、最近ではお仏壇に使う程度で一般的に日常では使うことが少なくなっています。

しかしながら、「ろうそく」という言葉を誰しも1度は耳にし、話したことがあると思います。それは、

「ろうそく」が日本文化の中に定着し、私たちの心の中に自然と存在しているからだと思います。

目で見る明るさだけではなく、炎の温かみ、燃える音、匂いなど体全体で感じられる蝋燭の明か

りは、心を穏やかにさせ安心感を与えてくれます。

そんな「ろうそく」を少しでも身近に感じて頂ければと思います。


1:蝋燭とは
2:蝋燭が燃える仕組み
3:蝋垂れについて
4:蝋燭の材料
5:蝋燭の形・大きさ・色
6:蝋燭の明かり
7:和蝋燭が白くなる訳
8:絵蝋燭について
9:和蝋燭を上手に灯すために
10:芯切りとは

1:蝋燭とは
蝋燭の起源は、古くはエジプト時代までさかのぼるとの話もあり、日本へは仏教と共に伝えられ

たといわれています。

電気もなかった時代に、人々は灯火具として松明や暖の明かりで生活していました。蝋燭が日

本で使われるようになった後も、一般的には高価であったため日常的には行灯などが使われて

いました。灯明皿に菜種油を入れ、そこに灯心を浸し皿から少し出した灯芯の先に火を点けてい

ました。蝋燭に比べると弱く暗い明かりでしたが、白い和紙で囲むことにより明かりを部屋全体に

広げたり、背に和紙を立て明かりの反射が正面に来るようにしたり、より明るさが増すよう工夫し

ていたようです。

蝋燭もそれ自体が燃料となり芯と組み合わせることにより火を灯すことができます。菜種油やオ

イルと違い通常は固形で、年数が経ってもその性質は変わりません。ただし、保管状態よっては

変形や変色はします。直射日光の当たる場所に置いておくと熱で柔らかくなり曲がったりします。


日本に入ってきた最初の蝋燭はミツバチの巣から取り出した蜜蝋を使用したもといわれていま

す。それまでタイマツを燃やしたり油で明かりを取ったりの生活の中かでは、とても画期的であ

り、また高価なものであったようです。

江戸時代では藩の財政を支えるためにはぜ蝋の生産が盛んになりました。その後パラフィンワッ

クスで作られるようになり、ランプやガス灯や電気の明かりと移り変わりながら私たちの生活をよ

り明るく照らすようになりました。
2:蝋燭が燃える仕組み

蝋燭の芯に火を点けることによって、炎に近い蝋が溶け出し、それが毛細管現象によって芯に吸い上げられ、炎の熱で気化します。

その気化した蝋に引火しそれがまた炎となり明かりを灯し続けます。炎の中心から外側に向け温度が高くなりより明るくなります。

3:蝋垂れについて

炎で溶かされた蝋と芯に吸い上げられる量のバランスがよいとお皿のように淵が盛り上がった状態で溶けていきます。

それは炎の熱で蝋燭の周りにある空気が対流を起こし下から冷えた空気が上に向かって進むため中心より外側が冷やされるからです。

芯の太さに比べ蝋燭が太すぎたりすると、芯に吸い上げられるロウより溶けるロウが多くなり、それが溢れ蝋垂れを起こします。

また、ロウの種類によっても融点が違い、それが低ければ溶けやすく高ければ溶けにくいといったことも関係してきます。

また、蝋燭を斜めに立てたり、風などで炎が傾き続けるとそちら側だけ先に溶けてしまい、そこから蝋垂れを起こしたりもします。

蝋が垂れるとその分燃焼時間が短くなります。

和蝋燭が細長い形をしているのは、効率よくロウが燃焼するよう考えられたものと思います。


4:蝋燭の材料

蝋燭はその本体と芯の2つで形成されています。



パラフィンワックス板状

今日、一般的に市販されている蝋燭やキャンドルの原料として使用されています。

パラフィンワックスは原油中に存在する常温において固体または半固体の炭化水素になります。

1854年頃にはすでにパラフィンワックスを使用したろうそくがイギリスで作られました。価格が安

く、型でも作りやすいので大量生産されスーパーや量販店でよく見かける蝋燭です。


生蝋 白蝋 上掛け蝋

うるし科の木であるはぜの実から抽出した蝋分です。

豆のような実で、中心の果肉と外皮との間の薄皮から一番蝋分が採れるそうです。

はぜの木は南の九州や四国などの暖かい地方に多く自生している植物で、逆に北の方では漆

の木があったため漆の副産物として昔は漆の実からも蝋を採り、その漆蝋を使って和蝋燭を作っ

ていました。最近では会津の方で復活したとの話を聞きますが、当店でははぜ蝋を使用します。

代表的なものに伊吉、昭和福、葡萄、松山はぜなどがあります。

種類により色や硬さが違い、下地を作る生蝋は茶色であり、仕上げに使う上掛け蝋は葡萄はぜ

が多く含まれていて緑色をしています。また白蝋は生蝋を天日に晒し自然に漂白したものです。


ぬか蝋

米ぬかから抽出し融点が高い蝋です。
写真のぬか蝋は脱色していないものです。
脱色したものはクリーム色をしています。


ミツバチの巣から採れる蝋です。ミツバチは自分の体に蝋腺をもっており、巣に蜜を貯める際一杯

になった蜜がこぼれないようふたをします。その時、蝋腺から蝋を出しそれでふたをします。蜂蜜

を採取する際にとれます。原料としては一番古くからあるそうです。

日本に最初に入ってきた蝋燭も蜜蝋を使用したものと言われています。

自然のものは、ほのかな蜜の香りがし綺麗な明かりでが、市販されているもので香りの強いもの

は香料が入っていることが多いようです。



綿糸を編んで作ったもので、キャンドルや和蝋燭にも今日においては一般的に使用される芯で

す。蝋燭の太さや硬さに合わせ心の太さを変えます。

パラフィンワックスや蜜蝋を原料とした蝋燭に使用されることが多く、均一に編んであるため安定

した炎になります。また燃焼するに連れ芯が丸まるため温度の高い炎の外側で燃焼され芯きり

が必要ありません。ただし炎が小さいため屋外では風に消えやすいです。


紙芯

筒状に巻いた和紙の上に柔らかいちり紙などをまいたもので、和蝋燭によく使われます。和蝋燭

の原料がはぜ蝋からパラフィンワックスに変わり、灯心を使わなくとも燃焼がいいためその代替

品として使われるようになったようです。ロウの吸い上げが多く炎が大きめになります。風にも消

えにくいのでお墓参りや屋外で使用したり、大きな炎を必要とする時に使用します。



灯芯
灯芯巻き 巻き上がり

筒状に巻いた和紙の上に灯心を巻いたものです。イグサの種類で外皮を裂きその中から引き抜

いたズイの部分を灯心といいます。スポンジの様な素材で1m程の長さがあります。切れやすく

巻くのにも慣れが必要です。昔は灯明皿に菜種油を入れそこに灯心を浸し火を点け明かりを取っ

たりしていました。はぜ蝋を原料とした蝋燭では糸芯でも紙芯でも吸い上げが悪くきれいに燃え

ません。

今でもはぜ蝋で蝋燭を作る時は灯心を使用します。灯心は植物のズイを利用した自然素材なた

め一本一本太さが違い、それを手で巻いていくためどうしても場所により芯の厚さが違ってきま

す。それによって和蝋燭の炎が安定せず、瞬きのある炎になると思われます。そういった表情の

ある和蝋燭の明かりは今日の安定した明かりのある生活の中では、逆に心を落ち着かせてくれ

ると思います。

和蝋燭の明かりが照らす空間は広くはないですが、その空間は普段のものとは異なり、特別な

時間を過ごせる空間となります。



5:蝋燭の形・大きさ・色


和蝋燭には棒型と碇型の2種類あります。

昔は蝋燭が主な照明道具であったので、より蝋燭の上のほうで明るく大きな炎になるように芯の

先の方を特に太く巻いて作っていました。そのため、芯の太いところは蝋をたくさん塗って作って

いたため、棒型であっても蝋燭の形は上から下に向かって細くなるのが特徴的です。また、蝋燭

は目方で大きさを決めていたので、同じ量の蝋を使ってより立派に見せるために碇型といった形

を作ったという説があります。碇型は上から下に向かって湾曲していて中央部分が細くなってい

ます。碇型はバチ型とも言われその形が船の碇や三味線のバチに形が似ているからと言われて

います。今では上から下まで同じように芯を巻きますので、形の違いは見た目だけで用途は使う

方の好みになります。

どちらかで迷われた時は、ご利用になる地域のお寺、神社、お仏壇店でご相談されるとよろしい

かと思います。


蝋燭の大きさの呼び名には「匁」「号」「丁」などがあります。

「匁」とは尺貫法による重さの単位を意味し、1匁は約3.75gの重さです。

昔は重さを基準にして蝋燭を作ったのでそういった呼び名になったようですが、今日ではその単

位を使わなくなったので、その代わりに「号」という呼び名が一般的になりました。

「丁」とは、品物を数える語として使われ、和蝋燭でも「・・丁」「・・丁掛け」といった使われ方をし

ます。これは100匁を基準にし、一本が何本に分けた目方かを示しています。「50丁」ならば50

本で100匁の目方になるように作った蝋燭で1本が2匁の蝋燭になります。


和蝋燭の色には赤(朱)と白があります。

白は普段使い、年忌や命日、お盆などには赤を使う方が多いようです。

新潟市では葬式までは白い蝋燭を使い、出棺後は赤い蝋燭に変わります。その後、普段のお仏

壇にもお墓でも赤を使う方が多いようです。

お寺様にお伺いしたところ、お釈迦様の教えを書かれたものに、お釈迦様が亡くなられた時にあ

まりの悲しさに周りの花々も白く変わったと記されているそうで、そこからお葬式では白い蝋燭を

使います。その後、亡くなられた方が仏様になられることはおめでたく、蝋燭も明るい色である赤

い蝋燭に立て替えるそうです。

しかし、地域や宗派により異なることもありますので、お世話になるお寺様や地域のお仏壇店な

どで確認されると宜しいかと思います。



6:蝋燭の明かり

仏教において灯明は私たちの心の闇を照らす御仏の智慧

の光、そして煩悩のために迷い続けて生きている人々を救

おうと御仏がかかげる真実の光を表しているそうです。

蝋燭から照らされる明かりは柔らかく、温かく、優しいもので

す。

人間は炎を発見し、食生活を変え、外敵から身を守り、文化

を創ってきました。灯りは心を落ち着かせ気持ちを優しくし、灯りを囲むことで楽しいひと時を過ご

せます。

蝋燭の明かりは真っ直ぐに立ってこそ周りを明るく照らします。その明かりを心に灯し、みなで分

かち合い一つ一つ蝋燭の明かりが増えるように希望の明かりを増やすことができる日々を過ごせ

ることを願います。

また和蝋燭は仏事だけでなく、もともと照明としても使われていまいしたので、お部屋の明かりを

落とし蝋燭の揺らめく炎が醸し出す明かりの空間で時間を過ごされるのも宜しいかと思います。



7:和蝋燭が白くなる理由

何年も使わず箱に入ったままで久々に開けてみると赤い蝋燭のはずが真っ白になっていて驚く

方もいらっしゃるかと思います。仕上げたばかりの和蝋燭は緑色や赤など色が鮮やかですが、時

間が経つと徐々に白くなっていきます。これははぜ蝋や蜜蝋に起こる現象で、パラフィンワックス

を使用したキャンドルや和蝋燭は白くなることはありません。中に含まれる脂肪酸が表面に白い

粉のように浮き出てくるためです。そのままでも、燃焼には問題ありませんが、布やスポンジの

少し硬い方で表面の粉を落としてあげるときれいになります。

白くなることがはぜ蝋を使った蝋燭であることの証であり、またそれが味わいのあるよい雰囲気

かと思います。


8:絵蝋燭

今日では全国的に見掛けますが、絵蝋燭はもともとは山形や会津などの北の地方で発祥された

文化だと言われています。

昔は雪深い冬になると生花が採れず仏様にお供えするお花がないのは寂しいといったことで蝋

燭に花の絵を描いたり、また城下町ではお城への献上蝋燭として華やかな絵を描いたなどの理

由があるようです。新潟にもそういった文化が入ってきて長岡地方では昔から絵蝋燭がありまし

た。よく、絵蝋燭はいつ使ったらよいかと聞かれますが、先に述べたようにお参りする方の気持ち

でお供えするものなので、飾り蝋燭としてでも普段から灯明として使って頂いて結構かと思いま

す。また、お部屋のインテリアとして飾って頂いても宜しいかと思います。

しかし、年忌や法事などの際に使う蝋燭はお寺様に準じて行いましょう。


9:和蝋燭を上手に灯すために



・必ず釘の付いた不燃性の燭台に真っ直ぐに立ててご使用下さい。

・和蝋燭は風が吹いても消えにくいですが、風で炎が揺れると煙が出やすくなりますので、屋内

 で火を灯す際はあまり風の当たらないところでご使用下さい。

・火を消す際は、強く吹き消すと芯の灰が飛ぶことがありますので、優しく消すか火消しを使って

 下さい。

・和蝋燭の心は糸芯の蝋燭と違い、燃焼するに連れ黒く残ります。

 芯が長くなると炎が上に伸びたり、暗く感じたりしますので気になるようでしたら芯切をすること

 をお勧めします。


10:新きりとは


1:燃焼するのつれ芯が黒く
残ります
2:不燃性のはさみや
ピンセットなどで・・・
3:芯を摘み切ります
注)切り取った芯にも
炎が残りますので、一
度火を消してから芯き
りをすると安全です


注)火を消すときは息
で吹き消すと芯の灰が
飛び散る事もあります
ので火消しを使うこと
をお勧めします
4:炎の形がよくなります

芯切とはピンセットやハサミなどの不燃性のもので長くなった芯を摘み切って取り除くことです。

和蝋燭は燃焼するにつれ芯が黒く残ります。芯が長くなると炎が長くなったり暗く感じたりする

ことがあります。気になるようであれば芯きりをして下さい。燃焼中は切り取った芯にも炎が残り

ますので、一度消してから芯きりを行った方が安全です。

短くしすぎると炎が小さくなりすぎ蝋垂れしたりしますので、蝋燭の大きさに合わせだいたい1cm

から1.5cmほどの長さを残して切って頂けると宜しいかと思います。


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